下面醗酵を採用する国が増えてきたとはいえ、上面醗酵もまた、いつの時代にも続けられてきました。例えば気温が高く、この醸造法に適している夏だとか、エール、スタウト、ポータ、ヴァイスビール、ヴァイツェンビール、アルトビールなどのように、この醸造法でないと作れない特殊なビールの場合です。 今日知られている下面醗酵タイプのビールは19世紀に発展を遂げました。ミュンヘンの黒ビール、ドルトムントの淡色でアルコール分が強く、口当りのいいビール、ピルゼンのホップの効いた明るい色のビール、それからウィーンビールやメルツェンビールです。これらのビールが生まれたのは、麦芽の性質、醸造水の硬度や味、ホップの質といった、この地方で取れる原料のおかげでした。これらと並んで、上面醗酵によるビール製造も続けられました。しかし、例えばベルギーのランビックやゴーゼ、ブラウンシュワイクのムンメ、ハノーヴァーのブロイハンなどのように相変わらず自然な醗酵に頼っているビールでした。醸造所の親方が経験を積み、醸造学が次第に進歩したにもかかわらず、出来る製品は一様ではなく、さまざまの要素に影響されました。「パン焼きと酒造りはその日ごとに違う」という格言まで出来たほどです。 リンデによる冷却機の導入、ビール腐敗汚染菌の顕微鏡による検出、酵母の純粋培養、さらに麦芽生産、醸造、醗酵、熟成などにおける生化学的プロセスの研究を絶えざる前進が、ようやく現代の大量生産への道を開いたのです。このことは、お望みのタイプのビールをいつも同じ品質で十分貯蔵に耐える形で作ることが出来るということです。100年前のように、「冬のビールは質がいいが、夏に仕込んだビールはムラが多くて」というようなことはないのです。